D-time

Dタイム

ありがとうマンが贈る 
〜心に残るありがとう〜 話

2019.12.09

内緒のスプーン

 私は不妊治療の末にようやく産まれた子供だったそうです。幼い頃から本当に可愛がられて育ちました。もちろんただ甘やかすだけではなく、叱られることもありました。でも常にたくさんの愛情を受けて、なに不自由ない生活でした。両親共に少し年を取ってからの子供だったこともあると思います。本当に仲良し家族で反抗期も無く、両親のことが大好きでした。そんな私にも好きな人が出来ました。学生の頃から好きな人や付き合った人は何人かいたけど、初めて結婚を意識した人でした。でもその人とは遠距離恋愛だったんです。最初から分かっていたことだけど結婚を意識した時、好きな人と一緒に暮らす為には両親とも友達とも離れなければいけないことが大きくのしかかりました。
 どっちかを選択しなければいけないということは私にとって辛いことでした。バレンタインの日でした。私は彼から逆チョコをもらい、プロポーズされました。少し前から何となく予感のようなものはありました。でもその場で「はい」と即答出来ませんでした。次のデートまで約2週間、私は悩みました。そして彼と結婚することを決めました。プロポーズしてもらった時すごく嬉しかったし、本当に彼のことが大好きだったからです。
結婚を決めてから、私は両親や友達と出来るだけ一緒に時間を過ごしました。
 それと同時に少しずつ荷物を整理し、荷造りをしました。二度と会えない訳じゃないと分かっていても、慣れ親しんだ場所を離れることはとても寂しく感じました。私は結婚式の日を迎えました。式場に着いてから、緊張の中あっという間に時間は過ぎていきました。挙式を終え、披露宴が始まりました。ケーキカットを終えてファーストバイトとなりました。
 司会の方の言葉に両親が驚きました。両親には内緒にしていたけれど、ラストバイトを予定していたのです。思いもよらず呼ばれた両親は戸惑いながら会場の方に誘導されて私たちの元に来ました。彼のお母様から彼への
ラストバイトの後、私の番となりました。
 私は母親に内緒で自宅から持ってきたスプーンを取り出しました。自宅で長年ずっと使ってきたスプーンでした。母親はスプーンを見てすぐに気づき、驚いていました。スプーンを渡すと控えめにケーキをすくって私の前に差し出してくれました。私が口を開けて食べた後、母親は涙ぐんでいました。スプーンは式場で洗ってもらい母親が持ち帰りました。今でも実家にはその時のスプーンがあります。
たくさんの思い出と母の味と共に。

温かくなりますね。同時に何とも言えない寂しさも感じますね。
人には、新たな出会いがあれば、別れもある。絶対に逃げられない、逃げることができないことです。
しっかりと受け止め、逆に新たなスタートであるという気持ちでいなければならないですね!

とにかく、お父さん・お母さん、子どもたちに、もっともっと関わっていこうと決心しました。

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