ふるさとに 芸術・文化・伝統・風土を育む
近代的な製鉄も電気溶接も無い時代に、炉の炎と鍛冶屋の槌音から生まれた鉄細工の造形技法が鍛鉄(ロートアイアン)です。20代の6年間、サラリーマンとして金属加工の会社で働いておられた安川さんは、鍛鉄の手加工へのこだわりから機械加工が主の職場を離れ、全て手加工の鍛鉄職人として独立されました。「機械加工では出せない温もりと味わいのある手加工にこだわったんです。ここにある機械も、手加工の補助となるものしかありません」と話されます。仕事は全て特注品。「声をかけてもらったら引受ける」のポリシーで仕事に取組んでおられる安川さんは、オブジェ、ストーブ、炉、建築アクセサリー、手摺、エクステリア、ポスト、器などイメージやスケッチしかない難しいオーダーを技術の工夫と試作を重ね、鉄や銅、真鋳を使って作品に仕上げられます。「10年前の構造計算書偽造問題・姉歯事件の時は半年仕事が無くなってしまって、アルバイトをしながらの創作活動でしたが、もともと職人から始めているので創作活動も職人仕事も楽しめますから何とかやってこられました」と安川さん。今では独自の商売に加えて、地元の家具屋さんとのコラボ事業も盛況で、忙しい日々を送られています。そんな中でも鍛鉄鍛冶として、手作り技術の追求は旺盛で、欠かされることはありません。「その技術を続けないと出来なくなるんです。自分の腕も衰えるし、技術がすたれてしまう」と、溶接歴40年を超える熟練工の方に溶接を学び、カシメや鉄を溶かして合わせる昔ながらの伝統的な接合・造形技法の鍛錬を続けられています。
滋賀ならではの資源や素材を活かし、滋賀の価値観を伝える商品・サービスを県内外へ発信する取り組み『ココクール マザーレイク・セレクション』に、2012年安川さんの薪ストーブ“Ritsh”は選ばれました。森を守り再生したいとの思いで作られた薪ストーブは、火力が強過ぎて燃せなかった松などの針葉樹にも適応できる優れものです。「ストーブの内部が1000℃を超える高温になるため、鉄ではダメだと言い続けられましたが、丈夫さと蓄熱をポイントに長くゆっくり熱を放出する方法を3年間考えたんですよ」と生みの苦労を話されます。害虫に侵された針葉樹を、廃棄物でなく有機物として活用できる、里山保全の強い味方が安川さんの薪ストーブ“Ritsh” (リッシュ)です。地球市民の森センターや愛東福祉モールには“Ritsh”の薪ストーブが設置されているそうですよ。
プライベートでは、あいとうエコプラザ「菜の花館」のリサイクル事業に参画。東近江働き・暮らし応援センター“Tekito-(テキトー)”と共同で、就労支援と環境エネルギー資源活用を目的とした“チーム チャッカ”への事業参画など、各種ボランティア活動にも積極的に関わっておられます。今後は、扱い易く火力のある竹を、新たなエネルギー資源として活用する事にも挑戦中です。老若男女を問わず、環境に良く簡単に使える身近なモノがたくさんできればいいですね。
鍛鉄工房 室(むろ) 代表 安川 昌樹
〒527-0172
東近江市鯰江町2180-2番地
0749-46-8739
e-mail info@takumi-muro.com