ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
10年くらい前から、手仕事の作品を生活に取入れる風潮が始まり、多くの作家の作品が身近に感じられるようになりました。東近江市でも陶芸、木地、ガラスなどの器や、木工、アイアンロート、版画、染色・織物、絵画などの生活空間を彩るモノなど、多数の作家さんが創作活動に励んでおられます。中山さんはこの時期に彦根で、お気に入りの雑貨や民芸品を販売する、セレクトショップを始められています。「自分の好きなモノや共感できる作品を集めて、ライフスタイルショップとして手仕事の良さを知ってもらうための店づくりでした」と話されます。しかし、そのお店も「自分の限界を感じた」と2020年に閉店されました。
中山さんの叔母様が海外でも活躍された刺繍家だったことや、隣家の画家さんご家族と交流があったことなど、子供の頃から芸術が身近にあったことが影響したのでしょうか、大学を卒業した後、植物を扱うイベント企画会社に勤められました。「もともと植物が好きで、イベントを企画する際に花や草木をディスプレーしたり、グッズを作ったりする仕事を楽しんでいました。しかし、段々と大所帯になるにつれ全てが分業となり、自分の仕事の最終形も見えなくなって達成感を感じなくなってきたんです。そんな時にモノづくりの世界が羨ましく、まぶしく見えたんです」とお店を始めたきっかけを話されます。一旦閉店したのですが、手仕事へのこだわりと憧れは尽きることはありませんでした。「気に入ったモノを売るという自分の嗜好にはこだわらず、人に求められているモノを幅広く展示し、モノを売るだけに留まらずコトを共有する場所を造りたい」と、新たな視点でギャラリーを主としたお店『gENzai(げんざい)』を再び始められたのです。『gENzai(げんざい)』という名前は「今ここ」の場所と時間を、皆さんと共有したいとの考えから命名されたそうです。物品販売が主で、展示スペースも小さかった以前のお店と違い、『gENzai(げんざい)』はお茶を楽しみながら、人々が交わるサロンとしても機能するように、カフェを中心とした空間で、ギャラリーとワークショップが開催できる様に作られています。時折開催される様々なワークショップでは、大人のお絵かき会やブロックプリントワークショップ、漬物の会など、中山さんを取り巻く皆さんが、思い思いの嗜好で企画されています。何よりもこの建物の持つ力、200年ほどの経った梁や柱、建具や土壁の佇まいが醸し出す、唯一無二の空間を大事にしながら、作家のそれぞれの「今の表現」を感じてもらえる設えになっています。「何でもネットで買える時代に、わざわざここに足を運んでもらい、悠久の昔の日本の住まいを体験してもらうこと。そしてこの場所があって良かったと言ってもいたいですね」と笑われます。
「地域で頑張っている作家さんを応援する以上は、作家さんと同等の熱量で企画を考えていかねばならない」と強く心に決められている中山さん。ここに来て、見て、何かを感じてもらう場所『gENzai(げんざい)』でのギャラリー企画展が楽しみですね。今後益々のご活躍をお祈りします。
『gENzai(げんざい)』 〒529-1441 東近江市五個荘川並町743
E mail thegoodluckstore@gmail.com
INSTAGRAM genzai_gokasho