ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
今回は東近江市青葉町(旧八日市)の美術家、垣見敏雄さんをご紹介します。
奥永源寺で育った垣見さん。
美術の先生がいないのは当たり前という環境でしたが、後に人生の恩人となる、画家の東郷正二郎さんに美術を習われました。東郷先生の豪放らい落な姿に「自由人でいられることが羨ましい」と感じられ、美術の道に心を引かれられたそうです。高校ではお母様の恩師と巡り合い、三年間油絵を習うというように運命的な出会いが続きます。大学では油絵を学ぶかたわら、交流のあった先生の影響で、興味本位で彫塑を作ってみられます。「大学院で本格的に立体をはじめたのですが、教師にならなければ立体はしていなかったでしょうね。生徒に教えなければならないから取り組んだようなものですよ」と話されます。入選は彫塑なんですが、作品の数は断然油絵が多い垣見さん。その理由をたずねてみると、時間と場所とモデルが問題だとか・・・。「創作活動は3~4時間はやりたいんです。特に1.2m以上の作品作りは、一度止めると布を巻いてビニールで包んで保管しなければなりませんし、2ヵ月位とどめておく場所がいりますからね。立体をちょっと直すなんてのは、これに時間がかかるからできないんです」と垣見さん。彫塑の制作は「じっと眺めてちょっと直す」なんてことは、勇気と根気がいることなんですね。
垣見さんは50号位の油絵は今もよく描いておられて、毎年5/3~5に近江八幡の酒遊館で開催される〝よしの会〟のグループ展に出展されています。〝よしの会〟は近江八幡にある水郷美術館で、東郷先生を中心に京都と滋賀のお酒好きの美術教師の集る会で、垣見さんも30年以上参画されている団体です。「私が一番年下で東郷先生の唯一の教え子なんです。その立場は今も変わらず、お世話係りをしています。家内と結婚するきっかけを作ってくれたり、色々なお話が聞ける思い出深い集まりなんですよ」と話されます。
垣見さんの教職生活はもうそろそろ終わりを迎えていますが、はじめに赴任された甲良中学校では郊外部活展を開催されたそうです。「甲良中学校を広く知ってもらうためと、生徒達を活気づけるために大津、彦根、八日市と会場を借りて三年間、役場で資金をカンパしてもらって部活展をしましたね。この頃は教師と作家が半々位で、私のイメージはかつての東郷先生でしたよ」と笑われます。美術教師は美術教育と、作家としての作品作りの両面がないといけないというのが垣見さんの持論。「教師が工夫や考えで新しいモノを作ることが大切で、何より作品作りを楽しんでいるという背中を見せなければダメなんです。答えを終息させない。入口が一つで出口が一つなのは技術。入り口が一つで出口が無限なのが美術なんです」と熱く語られます。現在は日本美術教育学会の仕事を中心にされている垣見さん。そこに集うメンバーは、作家活動と教育を一緒に実践している人達が多いとか。
この人達の様な活動ができるように、若い教師にアドバイスできたらいいなと考えておられます。そんな先生がいたから展覧会を見に行ったりとか、絵や作品の前で足を止めて見てくれたりとか、家に絵や写真を飾る子供達が増えたらと願っておられます。美術館の敷居を低くし、地域に美術文化を根付かせたいと、垣見さんの熱い思いはまだまだこれからです。今後のご活躍が楽しみです。