ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
今回は東近江市五個荘竜田町にお住いの三味線奏者、小杉ヤス弘さんをご紹介します。
細やかな作業や芸事が好きな小杉さんは、定年退職後にお母様の介護の息抜きとして、絵手
紙を描いたり刺しゅうに取組んだりと、何でもやってみないと気が済まない意欲旺盛な多趣味
の人です。
何年も介護生活が続き、やりきれない気持ちで一杯だった年の暮れのある日、職場帰りの車
中から流れる津軽三味線の音色に心ひかれ、聞き入ってしまわれました。早速、近くで津軽三
味線の教室がないかと探され、大津にある「晃和会(あきわかい)」に電話をされます。そこで
山口晃義会主から野洲市永原の白井栄子先生を紹介され、翌月から『日本民謡・津軽三味線 白
井教室』の門を叩かれ、白井先生に師事されました。60歳の時のことです。三味線の難しさは
譜面がないことと、棹のどこを指で抑えればどんな音が出るのか、ツボが解らないことです。
「譜面は先生が作って下さったモノがあるので助かりますが、未だに左の指の使い方と、撥を
持つ右手の使い方には苦労しています」と笑われます。習い始めは三味線に慣れるために毎日
でも来なさいと言われ、11月に開催される全国大会で演奏することを目標として、週に3日教室
に通われました。「全国大会には30人で演奏する団体部門に出ました。緊張しましたね。でも
間違っても目立たないと思ったら、無心で演奏出来ました」と話されます。以来、3年続けて全
国大会に出場されます。ちなみに2013年から『津軽三味線・津軽民謡全国大会 in びわ湖』とし
て、毎年滋賀県で全国大会は開催されます。今年も11/29~12/1の3日間、第12回大会が大津市
民会館で開催されますので、ご興味のある皆さんは是非、大津市民会館へお運び下さい。
「三味線は3日鳴らさなかったら素人になる」と言われるほど、練習をしなければ上達しない楽
器です。ですから小杉さんも仕事帰りの夕食前などに、練習をされます。「集中力がある時に
夢中に弾きます。撥の弾く音がなかなか出ないんですよ。バチッと石をはじくような音が出た
らいいんですがね。演奏途中で間違っても最後まで弾き続けます。間違った所から弾き直すの
は失敗のもと。曲全体の流れを掴むことが大事なんだと教えられていますから」と話されま
す。白井教室では毎年春頃に発表会が開催され、約30名の生徒が一堂に会し、それぞれの演目
を2曲ほど来場者の前で披露されます。今では教室に通われることは月2回と減りましたが、発
表会前には2、3日続けて通われるようですよ。
三味線の楽しさをお尋ねすると「団体で皆さんと演奏していると、自分の音が解らないくら
いの一体感が気持ちいいんです。達成感というんですかね。比較的年齢の近い生徒さんが多か
ったのも良かったですね。すぐに親しくなれましたから。けれどやっぱり、白井先生のお人柄
です。コロナ禍の間もリモートやビデオで指導して下さって、人と出会えない中で元気をもら
えました」と小杉さんは微笑まれます。
これからも練習を重ね、お母様がお世話になった老人施設の慰問に、地域の会館やコミュニ
ティーセンターでのイベントに参加して、三味線を通じて地域の皆さんが和やかになれる様に
活動が出来れば…、と抱負を語られました。益々のご活躍をお祈りします。